私立暇人大学.ac

暇な私立文系大学生のブログ。

ない。

 心臓が次第に嫌な感じに脈打ち、手先が冷えて震えてくる。机の上のプリントを持ち上げ漁り、クローゼットにつるしていたワンピースや一回一回洗うのはもったいなくてまだ洗っていなかった履いてた記憶のあるズボンのポケットを探り、背負っていた記憶があるリュックの内ポケットを見る。あと数分で出なければ4限に間に合わない。やばい。

 

 私は焦っていた。

 

 時は平成最後の夏。全国的な猛暑の中、どこかの県では39度を越えただとか、誰と誰が入籍しただとかがLINEニュースで流れていた。アブラゼミやミンミンゼミが6年の地中生活を終え、地上で子孫を残そうとやかましく鳴いている。

 夏休みを数週間後に控えた大学生を待ち受けていたのは悲喜こもごもの期末テストであった。

 どこの大学でもそうなのかはわからないが、私の大学ではこの期末テストで本人確認のために学生証が要求される。学生証がなければ試験が受けられないのだ。ちなみにこの学生証、図書館に入る際にも必要になる。

 お察しの通り私が家を出る予定の時刻を押して探していたのはこの学生証であった。そして、この日、5限には授業内テストが予定されていた。

 授業内テストでも学生証は必要なのだろうか? わからないが明日も試験が控えている中、図書館に入れないのもまずい。先週、西洋美術史の本を返すために図書館に入る際に提示してからそれをどうしたのだろう。人間の記憶というものは全くあてにならないものである。

 

 結局、学生証は家で見つからず、とりあえず学生証が見つからない旨をTwitterに呟きながら私は家を出て大学に向かう各駅停車に乗った。

 

 ところで、テストを控えたほかの学生諸君は準備は順調だろうか? 私は順調ではないので、テストを控えた午前5時にこのブログを数か月ぶりに書いて現実逃避にいそしんでいる。iPhone8に純正イヤホンをつなぎ、tabiと名付けたプレイリストを再生し、小沢健二の『ぼくらが旅に出る理由』だとか、くるりの『ハイウェイ』だとか、奥田民生の『さすらい』だとかを聞いたりしながら旅に出たような心持ちでパソコンに向かっている。

 

 やらなければいけないことがあるのは自他ともにわかっているし、明らかすぎるのだが、どうしてもこのパソコンの脇に置いたプリントに立ち迎えない。全く興味のない分野というわけではないし、むしろ履修している講義の中では3本の指に入るほど好きな講義であるはずなのに。

 

 私という人間は魂の底から怠惰な存在なのだなと、今までの人生を振り返りながら考える。小学生の頃から夏休みの宿題は夏休み中に終わった覚えなどないし、試験も毎度直前に焦ってやっていた。やっていただけましかもしれない。今の私は明確に退化している。受験勉強でさえも胸に手を当てて本当に努力したといえるのか考えてみろと言われてしまえば、たぶん努力したと言ったら嘘になる。

 

 この怠惰な性格が嫌になるときがよくある。起きたら午後の2時だったとか、1限の必修に寝坊して出られなかったのでその後の講義を全部切って家でネットサーフィンをして何の生産性もなく一日を過ごしたとか、そんな時だ。

 

 iPhoneの充電が切れ、音が途切れたことで小鳥が鳴いていることに気づいた。外が明るい。あと4時間で試験が始まる。こんなふわふわとした主題も芯もないブログを気分で書いている場合ではない

 

 なんだか学生証が見つからなかったときのような焦りがよみがえってきた気がする。気が、する。

 

 

 そういえば学生証はとりあえずパソコンとファイル、スケジュール帳、筆箱を突っ込んで持ってきた猫柄の布のバッグの内ポケットで見つけた。各駅停車から急行に乗り換えた後のことであった。

 

 人生そんなもんである。たぶんこれからもずっと。