私立暇人大学.ac

暇な私立文系大学生のブログ。

中国旅行記① 西安・咸陽へ

9月6日金曜日。私は単身大阪へと向かっていた。6:18新横浜発の新幹線の中で、ああ、あれを持ってくれば良かった、これを入れ忘れたなどと考えていたはずなのだけど、旅を終えてこれを書いている今となっては何を忘れたのかとんと思い出せないので、大して必要なものではなかったのだと思う。

新幹線を降りたところでようやく、あれそういえば関西国際空港までどうやっていくのかしらと思い至った。少し気恥ずかしさを覚えながら改札の横で乗り換えを調べ始める。2時間何してたんだろう。

はるかというやつが直行で出てるらしい。いや待て、ちょっと高いぞ。めんどくさいがいったん大阪駅に行って環状線に乗り換えることにした。1000円くらい違う。全力で関西特有の右乗りエスカレーターを詰まらせ、謝罪の言葉を表で吐き、内心ではエスカレーターの片乗り文化に呪詛を吐きつつホームに降りた。

関西の電車は座席が左右向い合せじゃなくて前を向いているんだなと思いながら一人席に座ったら、関西国際空港駅は終点だったので気を抜いてしまい、いつの間にか寝ていた。終点で年齢も顔もわからない女性(私に声を掛けたらすぐに消えてしまい顔を見ていなかった)に「着きましたよ」と起こされて慌てて電車を飛び降りる。終点折り返しの電車だった。危ない。名も知らぬ親切な女性に感謝しながら第2ターミナルへ歩いて行った。

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集合時間の11時までにはまだ1時間ほど時間があった。今回の旅行はツアー参加である。どんな人が来るのか、何人くらい参加するのか全く知らない。もともとは船で上海までゆっくり行く予定だったが、台風の影響で急遽飛行機に変更になったと前日に連絡があった。追加料金で懐が痛い。空港のドラッグストアでとりあえずストッパを買った。中国への旅行で一番不安だったのは食事だった。口に合うか、体に合うのか。お腹を下したらどうしよう。中学の修学旅行の時に横浜中華街で食べた料理がチャーハン以外全くおいしくなかったのが記憶に鮮明で、本場の味は日本人の口には合わないのだろうと思っていた。結論から言うとストッパは一回も使うことはなかったし、食事はめちゃくちゃおいしかった。それはこれからゆっくり語っていくことにしよう。

歩き回っていたらちょうどいい時間になってきたので集合場所に向かうことにした。翼の広場とかいうやつらしいがずっとうろうろしていてもそれっぽい場所がない。インフォーメーションに尋ねると、今はもうないらしい。とりあえずもともと翼の広場があった場所がこのあたりなのでここに向かってみては、と言われた。なんだか先行きが不安になってきた。向かってみるとちらほら参加者っぽい人がいるけど確信が持てなくて何回もトイレに行った。話しかけられなかった。私は自他ともに認めるコミュ障なのだ。

私が何回目かトイレから出てきた時、集合場所を変更する旨のメールが来て、場所を移動した。20人くらいの人がそこにはいた。女性が多めで、男性が少し、中年の男性が1人混じっているくらいであとはほとんどが学生に見えた。今回のツアーは乗馬もする上に、日数も長めなので体力があって時間のある学生が多いのだろう。

今回の引率は長年このツアーを主催するCさん。中学生の娘のZちゃんも一緒に来ていた。2人とも日本語も中国語もペラペラ。空港の一画で円になって自己紹介をしあった。とてもじゃないけど全く名前を覚えられないのでとりあえず隣の人の名前を覚えた。春ににょきにょき生えてそうな名前だったので覚えやすかった。

直前に飛行機を取ったので全員一緒の飛行機はとれなかったらしい。先発組(天津乗換)と後発組(西安直行)に分かれ、私は後発組となった。20時出航らしい。当時11時半。まじか。先発組は14時出航なので会ってすぐひと時の別れとなった。引率の人いなさそうなんだけど大丈夫なんだろうか。(後から聞いたら引率なかったらしい。まじか。)

とりあえずお腹が空いている何人かで連れたってごはんを食べに行った。うどんだった。昨夜は最後の日本での食事、と思いながら二郎系のラーメンを食べていたので大変胃に優しい。

今回のツアーは関西以西の参加者が多いみたいだ。方言トークで盛り上がるテーブル。盛り上がりつつも席を立ったのは14時くらい。17時くらいまではすることがないので暇を極めている。1時間半くらい空港内を散策するも(そういえばこの時meijiのALMONDを買ったなと思い出して今発掘した。書きながら食べているが、潰れてたけど変わらぬ味で美味しい)限界がきて、椅子に座り込んで、この時間にはもう船に乗ってたはずなのになあと話しながらちょっと寝た。急に本を買いたくなってTSUTAYAに走り、表紙がかっこよかった『江戸川乱歩名作選』を手に取った。今回は海外用のWi-Fiを契約しなかったので多分かなり移動時間とか暇になりそうだなと思って買った。旅行中に読み終わる予定だったけど結局短編一つしか読み切れなかった。

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これの右上。『人間失格』と『こころ』と『午後の恐竜』も欲しいです。

いよいよ搭乗、出発。搭乗手続きでちょっと揉めた。というのも私たちは帰りの手段を確定させていなかったからだ。搭乗手続きでは帰りのチケットも見られて何日滞在するのかを確認される。行きが台風で船から変更になったので、もしかしたら帰りも飛行機になるかもしれないと判断が宙ぶらりんなところであった。結局向こうで入国拒否されても文句言いませんよという旨の契約書にCさんが著名して搭乗手続きを終えた。向こうについても日本に帰されるのでは……。

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大きな不安を抱えながらソルティライチバウムクーヘンを買って飛行機に乗った。何回乗っても飛行機の離陸の瞬間は緊張する。Gが体にかかり、地面を離れた時のあの内臓が浮く感覚。好きになれない。海南航空という航空会社の飛行機だったが、チャイナ服っぽい制服でかわいい。機内食も出た。野菜はおいしくなかったけど、唐揚げっぽいのはおいしかった。なんだかパンは慣れ親しんだ食感がするなと思って裏を見たら日本のパンだった。さもありなん。

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買ったばかりの『江戸川乱歩名作選』の中の一つ目の短編『石榴』を読み進めたり寝たりしながら4時間後、西安空港に到着した(ちなみに石榴は硫酸をかけられてぐちゃぐちゃになった人間の顔の比喩だった。もうちょっと穏やかそうな本を買えば良かった)。入国審査はパスポートの情報と泊まるホテルを紙に書いただけで拍子抜けするぐらいあっさり通された。ガバガバすぎてちょっと別の意味で不安になる。この時書いたホテルは日程変更で結局泊まらなかった。

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驚くことに世界4位の面積を持つ中国の国内での標準時間は統一されていて、東北地方の満州だろうが西端の新彊だろうが問答無用で北京時間が適用される。どこに行っても(非公式には新彊時間は存在するが)公式には日本との時差は1時間だ。中国の全土統制へのささやかな断片に思いを馳せながら腕時計の時間を1時間遅めた。

それから、荷物を受け取る前にちょっとトイレに寄った。綺麗な洋式トイレだったけど、便器に被せる使い捨ての便座シートがあって、それが必要になる状況って一体……と宇宙猫になってしまった。流してしまってから気づいたんだけど、中国は使用したトイレットペーパーをトイレに流せない。備え付けのトイレットペーパーは3枚重ねかってくらい分厚いし、流せないのは紙の問題なんだろうか?下水の問題?使った紙はトイレ内のゴミ箱に捨てなければいけない。かなりハイペースでゴミ箱を回収しないとかなり臭いことになりそう。どうか詰まりませんように、と祈るような気持ちでトイレットペーパーを見送った。

先発組とも無事に合流し、マイクロバスで咸陽のホテルへ向かった。乗り込む人数がギリギリなので後ろの座席に積んだスーツケースがなだれ落ちそうだった。通路にもスーツケースを置いて横に座る人が動かないように手で抑える。深夜0時も過ぎた夜中なので外を見ても街灯が灯るばかりでうっすらと見える中国語の看板以外特に何も見えない。明日へ期待を膨らませる。西安と咸陽は伊豆と東京くらい距離があるらしい。近いような近くないような。東北出身、横浜歴2年目の私にはよくわからない。中国の地図を開くと近そうに見えるが。というか咸陽=西安だとなぜか勝手に思ってた。西安の昔の名前が長安でもっと昔の名前が咸陽、みたいな。全然違う場所だった。

湖滨國際酒店に着いたのは夜中の2時くらい。眠すぎる。中国のホテルは名前に酒店か飯店が付くところが多い。寝るのが重要じゃなくてご飯を食べたり酒を飲んだりするところだったんだろうか。

ホテルの部屋割りは自己紹介の時に唯一名前を覚えた隣に立ってたTと一緒だった。シャワーをさっくり浴びて(浴槽無しのユニットバス。トイレ側との段差がないうえ仕切りも特にないので浴室中に水が広がってどうしようかと思った。)ベッドに身を投げて就寝。初日にして3日目くらいの疲労を感じる。数時間前にはまだ日本にいたとか信じられない。

明日は9時集合みたい。まじか。